
2021年11月10日
皆様こんにちは、インポーターの大野みさきでございます。
書き出しと同時に、いきなりクイズです。
紀元前6世紀頃(春秋時代)、中国の山東省で産声を上げ、当時の遺跡、また王墓の副葬品として、壺から干からびた状態で発見された、ある「食べ物」とは何でしょうか?
日本国内で初めてこれを食べたのが、徳川光圀です。日本史で水戸黄門が最初に食べたものは数知れず。ラーメン、チーズ、黒豆納豆・・・。生類憐みの令もお構いなしで、お肉も食べまくっていたとか。物珍しく高価な輸入品が一般的に食されるようになったのは、満州引揚者によってもたらされた以降の時代です。それから一気に市民権を得て、日本のみならずマンドウ、ピエルク、ピエロギ、モモ、ヴァレーヌイク、カルドウーニ、ヒンカリ、ヴィルティニャイ、ペリメニ、マンティーヤと名前を変えて、今や類似食として世界中で愛されています。
我が国では茹でる調理法から、焼く調理法で定着しました。「すみません、これ苦手です」なんて方がいらしたら一歩前へ。何がダメなのか。じっくり腰を据えて事情聴取したいぐらいです。「もう毎日、これでいいよ」 鍋パ、タコパを差し置いてみんな大好き!もはや日本人の国民食です。
その食べ物は中国では「チャオズ」と呼ばれ、私たちにも大変馴染みのある、ギョウザ/ギョーザ/ぎょうざ/餃子として知られています。
前置きで500文字オーバーと長くなりましたが、今日は餃子とワインの相性を探っていきましょう。
休日の昼下がり、友人と餃子を90個作りました。半分はプレーンの白菜餃子、残り半分はパクチー餃子です。「やっぱり餃子にはビールでしょう」と定番でスタートしていたのですが、居酒屋での「とりあえずビール」的な趣向ゼロの能無しペアリングにちょっと待った!そもそも本当に餃子とビールは合うのか。と疑問を抱きました。
ビールはゴクゴクと喉越しを大切にしますが、ワインはゆっくりと香りを楽しみ、その余韻を感じる飲み物です。
外はパリッ、中はジューシー。白菜と豚ひき肉の甘味と旨味が口いっぱいに広がります。そこへ程よく冷やされたスパークリングワインを流し込みます。泡が弾けてアロマが鼻腔を占拠します。食材を引き立てる十分な酸、それらが合わさり見事なハーモニーを奏でます。ビールのビターなアフターテイストでは、この美しい調和は生まれないでしょう。
わせたワインはフランス産のシュナンブランとシャルドネがブレンドされた、フレッシュで飲みやすいもの。餃子にそっと寄り添うかたちで、主張は控えめですが、さり気なく良い仕事をしてくれています。
後のパクチー餃子とは最高のペアリングで思わず吠えました。パクチーに感じる、あの個性的な香りは、リナロール、デカナール、ノナナールなどのモノテルペン類です。ワインにも複数感じられる香り成分です。香りの強度は異なりますが、共通点があるので仲良し度合いも半端なく、実に仲睦まじいカップルでした。
恐らくビールでは、この感動は味わえなかったでしょう。餃子とワインを合わせる楽しさに目覚めました。
今回頂いたワインの他に、餃子におすすめのワイン7選をご紹介しましょう。
デラウエアの旨味が魅力的なペットナット。旨味と旨味のかけ算。肉汁をワインの酸がさらりと流し、いくらでも箸が進みます。泡が抜けても白ワインとして楽しめます。餃子と頂くことを想定していたのかわかりませんが、岩谷さん貴方は天才です。
YELLOW MAGIC WINERY ピップホップデラ2019 参考価格2,700円
ロワールの異端児、アレクサンドル
バンが造るソーヴィニョンブランです。透明感と凛とした佇まい、ワインだけで完成してしまっていますが、ここにパクチー餃子が合わさると、文句なしのマリアージュでしょう。圧巻のコンビネーションの誕生をニヤリと想像します。
エル ダンジュ 2015 参考価格5,500円
ドンナフガータが手掛ける、土着品種のレネッロ
マスカレーゼを使ったロゼワインです。エトナの火山に由来する豊かなミネラル感が餃子を引き立て、紫色のスミレや藤の繊細なフローラル香で、ワンランク上のエレガントなマリアージュになること間違いなしです。
DONNAFUGATA スル ヴルカーノ ロザート 2018 参考価格4,500円
※赤ワインと同じように果皮や種を醸して造られた白ワインの呼称。詳しくはこちら。
アルザスのクリスチャンビネール自信作は、ヴィンテージによって醸し期間の異なるゲベルツトラミネールとピノグリをブレンドしました。薔薇、オレンジピール、ハーブ香が心地好く、亜硫酸が無添加なのに、こんなにキレイな仕上がりです。ワインのアンニュイさが餃子のカジュアルさと相まって絶品です!
CHRISTIAN BINNER シ ローズ 2015&2016 参考価格各3,900円
伊ラッイオ洲のプロカニコを用いたオレンジワインです。出汁のニュアンスがある旨味の豊かなタイプです。キノコやセロリ、貝柱や海老などが入った餃子とも相性が良さそうです。熱々を頬張りながら、ワインはやや冷やした状態からのスタートが望ましいです。マリーニ
ジェオルジェアのセンスの良さにうっとり♡
MARINI GEORGEA ヴィーノ ヴィアンコ ZERO8 2017 参考価格2,970円
ひと口目から貴方に出会えて本当に良かったと思えるワインです。どちらの品種(リボラジャッラ&フリウラーノ)も甲乙つけがたく、ペアリングでも素直に美味しいと感じられる100点満点の代物です。この価格でこのクオリティはあり得ない。5,000円以上の価値はあると思います。見つけたら絶対に買い!です。
NANDO レブラ&ヤーコット 2018 参考価格各2,940円
スロヴェニアを代表する造り手であるカバイのオレンジワインです。2週間醸したピノグリからは、タンニンにも程よく厚みがあり、ふくよかで優しいボディです。きつね色に焼き上がったパリッと香ばしい皮とも妙にマッチングします。滋味深いワインは、しみじみ旨い!
KABAJ シビピノ 2016 参考価格3,980円
こうして見ると、ロゼワインやオレンジワインなど、醸し系のワインが多いことに気が付きました。赤ワインは申し訳ございませんが、今回はパスです。敢えて合わせるならタンニンを抑えた、薄うま系がおすすめです。
家族で手作り餃子でも、有名店のテイクアウトでも、あるいは持ち込み可能なお店でBYOでも、様々な楽しみ方がありますね。パスタにワインを合わせるように、餃子のお供にもどうぞワインをお選び下さい!!
それでは皆様、ごきげんよう!
■餃子と頂いたワイン
CFGV ベラムールN/V 800円
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/