
2021年02月15日
健康的で安全、といったイメージがあるナチュールワイン。その呼ばれ方は、ヴァン・ナチュール(自然派ワイン)からオーガニックワイン、ビオワインまでさまざまです。それぞれのワインの違いや製造過程、おいしく味わう方法を知って、ナチュールワインをもっと楽しみましょう。
ヴァン・ナチュール(自然派ワイン)は、ブドウの栽培方法から、自然の酵母を使用して発酵させる過程、瓶詰めにいたるまで、できるだけ自然に近い形で製造されているワインのことです。
こういった栽培・製造方法を通して作られたワインは、ブドウ本来の味が生きていたり、生産者の想いを感じたりすることができるため、ワインファンからの人気を集めています。また、味だけでなく、土地や環境のことを考えて作られているこだわりも、人気を集めている理由のひとつです。
一言で自然派ワインと言っても、「ビオワイン」や「オーガニックワイン」など、さまざまな呼び方があります。
「オーガニックワイン」は、有機栽培のブドウを使用し、厳しい基準を満たしたうえで認証を得たワインのことです。具体的には、化学肥料や合成化学物質を使わず、遺伝子操作を行わないという規定があり、さらにこの規定を3年以上クリアし続ける必要があります。
「ビオワイン」は、「ビオ」と「ワイン」を組み合わせた造語。日本においては、有機栽培のブドウを原料としたワインの総称として呼ばれています。「オーガニックワイン」を名乗る場合は有機JAS認証を受ける必要がありますが、「ビオワイン」に関しては、定義や厳格な規定が定められていません。そのため、生産者次第で自由にビオワインを名乗ることができます。
一方で、ヨーロッパやアメリカでは、「オーガニックワイン」も「ビオワイン」も厳格な規定のもとで製造されています。国によって、その基準や定義が異なるので、ラベルにある生産者や製造過程をチェックしてみるとよいですよ。
ヴァン・ナチュールは、農薬や化学肥料を使用せずに作られています。そのため、育ちのいい健康なブドウのフレッシュさが口いっぱいに感じられ、ブドウのえぐみも感じずに楽しむことができます。
また、無ろ過または軽いフィルターを通してろ過をしてから瓶詰めされることが多いため、ワインの色が濁っていたり瓶の底に澱(オリ)が溜まっていたりする場合があります。ですが、これはブドウのうまみがしっかりと凝縮されている証拠。品質的には問題ありませんので安心して飲めますよ。
ナチュールワイン(自然派ワイン)に使用するブドウは、主に「ビオロジック農法」と「ビオディナミ農法」という2種類の農法から作られます。
「ビオロジック農法」は、農薬・化学肥料を使用せず、遺伝子組み換えを行わない、また、認証を受けた有機肥料のみ使用することができるという有機農法です。加えて、有機栽培を3年以上続けていないと認証を受けることができません。
一方、「ビオディナミ農法」は、ビオロジック農法をベースとし、天体や植物・生態系との関連性を取り入れた有機農法です。オーストリアのルドルフ・シュタイナー博士によって提唱されました。
ブドウ栽培の作業は、月と地球の位置関係や星座が記されたカレンダーに合わせて行います。さらに肥料は天然由来の「プレパラシオン」を使用することで、土壌の活性化や生態系とのバランスを保っています。「ビオロジック農法」よりも、さらに手間がかかった方法といえるでしょう。
ビオワイン、ヴァン・ナチュール、オーガニックワインのそれぞれで、製造工程が異なります。
ビオワインは自然酵母・乾燥酵母のどちらを使用しても問題がなく、ろ過の実施にも規制がありません。
これに対し、ヴァン・ナチュールやオーガニックワインは、自然酵母による発酵が定められており、ろ過は実施されません。ワインができあがるまでの過程で余計なものが入ってしまわぬよう、厳格な規定のもと製造されていることがわかります。
ワインは、酸化防止剤である亜硫酸塩を使用せずに流通させることは難しく、使用しないと菌が増殖して品質が落ちてしまう可能性があります。そのため、ナチュールワインでも、最低限の酸化防止剤であれば使用することが認められています。
また、国によって基準も異なるため、酸化防止剤を入れない生産者からできるだけ少量に抑えている生産者までさまざまです。
種類が豊富なナチュールワイン。「有機」や「オーガニック」の表記があるワインも増えており、どのワインがおいしいのか、品質がよいのか、なかなか判断しにくいですよね。
よいワインに必ずしもついているというわけではありませんが、品質のよいものを選ぶひとつの目安として、オーガニックの認証を受けた証の「認証マーク」をチェックすることがおすすめです。代表的な「認証マーク」について3つご紹介します。
2010年より定められた、EUでもっとも有名な有機栽培の認証。原料の95%以上が有機農法で生産されているという厳格な規定を守ったワインのみ、ユーロリーフの認証を得られます。
1981年に定められたフランス政府による有機栽培の認証です。ワインに関する有機認証は、2005年より行われるようになりました。AB認証では、土壌や栽培、醸造といったすべての過程で、農薬や化学肥料等を一切含まないことが基準とされています。
フランスを拠点とする世界最大規模の有機栽培認証期間。約80ヵ国以上の国々で展開されているため、その品質に対する信頼は非常に厚いものといわれています。有機農法か自然農法で栽培されたブドウを使用したワインのみ、エコサートの認証を受けることができます。
¥2,772 (税込)〜/赤/イタリア
イタリアの「ラ ビアンカーラ」。アンジョリーノ・マウレ氏が製造する赤ワインです。1989年から農薬や肥料を使わない有機栽培を続けており、醸造の際も酸化防止剤を使用しない製法にこだわり続けています。そのこだわりの製法により、味わいはブドウの生き生きとした果実感やスッキリとした印象を持っています。
¥1,958(税込)〜/赤/フランス
フランスの生産者「シャトー・フェラン」が作るオーガニックの赤ワイン。世界でもっとも厳格な規定が定められているという、オーガニックの認証「デメター認証」を受けています。メルロー・カベルネフラン・カベルネソーヴィニヨンの3種のブドウがブレンドされており、カシスのような風味と柔らかな酸味を感じられる味わいです。
¥2,860(税込)〜/白/フランス
フランス・アルザスの「ドメーヌ・フェルナン・エンジェル」が生産しているオーガニックの白ワインです。アルザスで栽培されるぶどう種の「ゲヴェルツトラミネール」を使用してビオロジック農法で作られており、エコサートのオーガニック認証を受けています。甘さと少なめの酸がバランスよくマッチした味わいと同時に、バラやライチのような香りも楽しむことができるワインです。
¥1,738(税込)〜/白/ドイツ
ドイツの「ファルケンベルク」が生産する、ユーロリーフの認証を受けたオーガニックの白ワインです。1908年にドイツで発売され、日本でも40年以上に渡って親しまれている「マドンナ」。ジューシーな果実感とやや辛口の味わいに、桃や蜂蜜のような優しい香りを楽しむことができます。
¥9,680(税込)〜/ロゼ/フランス
フランスのコート・デ・ブラン地区、ヴェルテュの生産者「パスカル ドケ」によって造られているオーガニックのロゼワインです。2010年に、フランス政府によるAB認証を受けました。
プルミエクリュ(一級)のブドウのみ使用されていることや、糖分をなるべく加えずに造られていることから、ブドウの果実本来のみずみずしさを感じることができる味わいです。
ヴァン・ナチュールは気温の変化による品質の劣化が起こりやすく、非常にデリケート。そのため、14度以下の陽の当たらない場所で保管するのおすすめです。ワインセラーがない家庭では、冷蔵庫の野菜室で保管すると、おいしく味わえる期間を長く保つことができますよ。
ヴァン・ナチュールをグラスに注ぐ際は、瓶の底に溜まった澱(オリ)がなるべくグラスに入らないよう、ゆっくりと注ぎましょう。
また、開栓後、時間が経つごとにその味も変化するヴァン・ナチュール。なかには、時間が経過してからの方がおいしさが増すものもあるので、変わりゆく味を楽しむのもおすすめですよ。
ブドウの栽培から製造過程まで、数々の厳格な規定やのもとに造られるヴァン・ナチュールは、生産者のワイン造りへの想いを感じることができます。ワインを味わうだけでも楽しいですが、ワインの裏側にある物語を知ることで、より一層楽しむことができるのではないでしょうか。お手軽な価格のものも豊富にあるので、ぜひチャレンジしてみてください。
※商品価格は、2021年1月30日時点での情報です。