2021年08月25日

コルク VS スクリューキャップ、どっちの栓がいいの?!

皆様こんにちは。インポーターの大野みさきです。

ワイン栓の代表格であるコルクは、ボトルのクロージャーとしては、最も知られていますね。そして便利なスクリューキャップも侮れません。両者を徹底比較して、どちらが本当に優秀な栓なのか、甲乙つけたいと思います。

題しまして、『コルクとスクリューキャップどちらがいいの?!』 のテーマで本日はお送り致します。

ワイン栓の種類

一口にコルクと言っても、天然コルク、合成コルク、圧搾コルクと様々な種類があります。ヴィンヴェンション社(合成コルクメーカー)の2016年のデータによると、ワイン栓のシェアは次の通りです。

圧搾コルク(テクニカルコルク)が43%で首位を独占し、その後にスクリューキャップが続きます。それぞれの良し悪しを語る前に、先ずはワイン栓の歴史を見ていきましょう。

コルク栓普及の歴史

天然コルクは、コルク樫という木の表皮を原料とした栓で、太古から使われて来ました。イスラム勢力がコルク産地(イベリア半島)を制圧していたのでアルコールが普及せず、また樽自体が容器であり、ワインは熟成させるものでは無かったことから、5世紀末~15世紀末までの1000年間、コルクが日の目を見ることはありませんでした。

ところがガラス瓶が安価に作られるようになった17世紀から、スクリューキャップが誕生する20世紀後半までは、ワイン栓はコルクが牛耳ります。

スクリューキャップが出現の背景

コルクメーカーは決して認めませんが、良質なコルクが割り当てられなかったと言われる南半球が、品質とコスト面でコルクに代わる栓の開発に乗り出し、スクリューキャップが現れたといわれています。

スクリューキャップが持つ、「安いワイン栓」のイメージから、スクリュー反対運動が起こり、普及に伸び悩んだ時期もありました。しかし、2000年のコルクショックで世界中のコルクが不足すると、ここぞとばかりにスクリューキャップが台頭してきます。コルク臭が回避できるとという優れた品質を消費者に訴えかけ、ワイン栓としての大成功を収めることに。

それから20年が経過した現在、オーストラリアとニュージーランドのスクリューキャップの普及率は、驚くことに100%に近い数字です!

合成コルクはどのようにして生まれた?

1970年代、旧世界では安価なプラスチック栓ワインから、高価なコルク栓ワインへ、消費者の需要がシフトします。新世界ではオーストラリアやカルフォルニアで高級ワインが増えはじめ、再びコルクにニーズが集まりました。

1980年にはコルク臭(ブショネ・TCA)が激増しました。しかしながら、全ワインの3~5%がコルク臭のリスクを抱えているのが黙認されている時代でした。

非を認めないコルクメーカーへの対抗処置として、合成コルクが誕生します。300年に渡ってワインの瓶口を天然コルクが独占していた時代は、終わりを告げました。1990年代半ばには、プラスチック製の合成コルクが、広く受け入れられるようになりました。天然コルクと合成コルクのデメリットを克服し、コルクメーカー各社はテクニカルコルクの開発に乗り出します。圧搾コルクの最大のウリは安価であることです。

最近は高級ワインにも使用されています。粒状の天然コルクを固め、ワインが接する液面、あるいは両面(アモリム社のツイントップ)に天然コルクが張られています。

※ブショネとは
天然コルクの最大の問題であるブショネ。ブショネとはTCA(2 4 6-trichroloanisoleトリクロロアニソール)が原因物質であるコルク臭のことです。余談ですが、フランス語でコルク栓を指すブション(bouchon)に元々、鼻と言う意味のネnezを語尾に付けてブショネ bouchonneとなりました。ボトルとコルクの組合せが誕生した17世紀から認知されていましたが、メーカーが研究開発に本腰を入れたのが今世紀に入ってからなので、現在でも天然コルクで打栓されたワインのうち3~5%程度がTCAに汚染されていると言われています。原因物質の特定がなされたのも、ハンス ターナーによって研究論文が出された1981年のことです。最近ではTCAフリーコルクがリリースされたりして、その分野での研究が進んでいます。

ブショネのリスクを軽減した「ディアム」

また、天然コルクとスクリューキャップの良いところ取りをしたのがディアムです。従来のコルク粒よりさらに細かい粒を使い、特殊な加工技術で、TCA(ブショネ)のみならず、その他150種類の不純物が除去されます。

通常の圧搾コルクより6~36円/個と割高ですが、TCAのリスクがないのは歴史的な大進歩です。(閾値0.3ppt以下を保証) 業界トップのアモリム社も微細圧搾コルク、ニュートロコルクやヘリックスを発売して人気を博しています。

今世紀初頭にはスクリューキャップに対抗して様々な栓が開発されました。天然コルクの両端に5層膜が貼られたプロコルク、プラスチックキャップの内側に合成コルクのスクリューが付いたゾーク。ガラス栓のヴィノロックは、今もなお現役で活躍しています。

天然コルクの進化にも注目

続々と登場する栓に危機感を抱いた天然コルクメーカー。莫大なコストをかけた研究が功を奏し、TCAの発生率は年々低下していきます。

2016年にはアモリム社、コルクサプライ社、M.A.シルヴァ社などのメーカー各社が、TCAが閾値以下であることを保証する「ハイグレード天然コルク」の販売をはじめました。個体差によるバラツキは、新レーザー技術で解決する試みです。供給量を増やすために、コルクの森を拡大させる計画もあります。天然コルクもスクリューキャップや他の栓に対抗して、見事な躍進が見られます!

素材や製造方法によるメリット&デメリット

どの栓を選択しようにも、メリットとデメリットがあります。すぐに消費するワインなら、栓は何でも問題ないのですが、数ヶ月あるいは長期熟成させるのであれば、どの栓を選ぶかは重要です。

■天然コルク

‐メリット

柔軟性があるので瓶口に自在にフィットする
良質なコルクは、長期(30年以上)に渡ってワインの熟成を可能とする
抜栓のパフォーマンスを楽しめる
密閉性が高い割にオープナーで容易に抜栓できる
自然に戻る

‐デメリット

コルク臭のリスクが3~5%ある
ボトル差がある
ワインの風味(付与&除去)、品質の変化が著しい
温度の影響を受けやすい
垂直保管ができない
酸素透過量が多く酸素の影響を受ける
耐久性に欠ける
コツをつかまないと開栓しにくい
コルクの状態によっては閉栓できないこともある
長期熟成する際はリコルクが必要なケースもある

天然なのでメリットに比べてデメリットが多いです。スクリューキャップと比較してみましょう。

■スクリューキャップ

‐メリット

コルク臭なし(直接の原因ではない)
ボトル差がない
ワインの風味(付与&除去)、品質の変化が抑えられる
温度の影響を受けにくい
垂直保管が可能である
酸素透過量が少なく長期熟成が可能
耐久性に優れている(コルク割れ、吹き出しが起こらない)
開栓、閉栓しやすい

‐デメリット

自然に戻らない
抜栓時に華がない

スクリューキャップは熟成しないと主張する方もおられますが(自社の生産者もそのうちの一人)、世界のトップメーカーがこぞってコルクとスクリューで比較検証している最中です。現段階でも熟成は可能だということもわかっています。上記のメリットからコルクからスクリューキャップに変更する生産者も増えており、今や高級ワインにもスクリューキャップが使われています。

■合成コルク

‐メリット

コルク臭がない
天然コルクより安価

‐デメリット

抜栓、再栓がしにくい
酸素透過量が多い

■圧搾コルク

‐メリット

コルク臭フリー
天然コルクを型取った後の余りで作るので低コスト
酸素透過率が一定(=瓶差がない)
ボトリングで天然コルクと同じ瓶や機械が使える
合成コルクよりも抜栓、再栓が容易

‐デメリット

思い浮かばない

ワイン栓の酸素透過率

次に酸素透過率についてお話しましょう。酸素透過率とは、コルクやスクリューキャップを介して通過する酸素の量です。下記はそれぞれの栓の酸素透過量の値です。

・スクリューキャップ 0.06~0.0002mg/日
・天然コルク 0.005~0.0005mg/日
・合成コルク 0.002mg/日
・テクニカルコルク 0.003mg/日
 DIAM 1/3/5… 0.0016mg/日
 DIAM 10/30… 0.0008mg/日

※メーカーやランク・グレードによって、この数値には開きがあります。ディアムの数字:DIAM10ならメーカーが10年以上の瓶内熟成を保証)コルク粒の大きさや配合の割合によって発泡密度が違うため、数字が大きくなると酸素透過率が低くなります(=クオリティが高い)

スクリューキャップのTOPシェアを誇るアムコア社のステルヴァンインサイドは、0.06~0.0005mg/日の酸素透過量が4種類から選べます。また、圧搾コルクや合成コルクに関しても、同様に酸素透過量が選択できます。 

結論

天然コルクや合成コルクのように酸素透過率が高ければ、自ずとワインは酸化に傾き、傷付いたりんご、煮込んだ果実などの酸化に由来する香りが現れます。逆に酸素透過率が低いスクリューキャップでは、ワインは還元に傾き、茹でた野菜、温泉卵、硫黄、排水溝などの硫化水素の香りが出やすくなります

生産者が目指すスタイルによって、使用する栓に求められるものも変わってきます。どの栓を使うかによって、酸素透過量が異なり、それはワインの香りや味わい、熟成に大きな影響を及ぼすのです。

コルクvsスクリューキャップは、生産者、及び消費者の間でも賛否両論を繰り広げていますが、どちらが優れた栓などではなく、スクリューキャップですら、酸素透過量が違います。今や生産者は自分の造りたいワインのスタイルによって、栓を選べるのです。全てのワインがスクリューキャップ使用で、スタイルが同じではつまらないじゃないですか。この多様性こそワインの最大の魅力なのではないでしょうか。

それでは皆様、ごきげんよう!

参考文献:「新しいワインの科学」ジェイミーグッド、ヴィノテーク 「ワインの栓」最前線

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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