2021年11月03日

ブドウ生産者と猫を救う!?ドイツワイン王子が手がける「ミケリースリング」誕生ストーリー

こんにちは、インポーターの大野みさきです。

近年はコロナウイルスの感染拡大を受け、飲食店の断続的な休業やイベントの自粛などで、世界のワイン消費は落ち込みました。

シャンパーニュ地方は、昨年は豊作に恵まれたにも関わらず、供給過多による価格暴落でシャンパーニュのブランド価値が損なわれる恐れがあったため、同地方では収穫したぶどうの一部を廃棄するという苦肉の処置を取りました。世界中で生産量、販売量、輸出量のいずれも前年を下回り、ワイン業界も大変な局面を迎えています。

そんな中、「ぶどうの卸先がない!」と窮地に陥った生産者に、「全量を買います!」と言った男前インポーターがいます。SOS発信の時点ではぶどうの状態でしたが、ワインになると延べ25,000本になる計算です。

コロナ禍で生まれたアイデアいっぱいのワイン

今日は、「全量を買います!」で、生産者とぶどうを救ったインポーターのワイン誕生秘話をご紹介しましょう。

大阪府茨木市に本社を構えるのは、ドイツワイン輸入元のヘレンベルガーホーフ(株)です。業界でこの名を知らない人はいないほど、ドイツワインと言えばヘレンで有名です。

もっと言えば、【ドイツワイン王子】 と呼ばれている山野高弘さんは名物社長で、お父様はもとより、彼ご自身もドイツで約3年間、ぶどう栽培&ワイン造りをした経歴があります。

ワイン業界で躍進するドイツワインインポーター山野さん

ビフォーコロナでは、自社倉庫を開放する恒例のハウスメッセ(一般向けの試飲会)で、3日で全国から700人のファンを動員した実績!!講演活動なども行い、ドイツワインの再興を目指してきました。同国のワインは 『甘口イメージ』 を持たれる方も少なくないですが、今やかつてのワインとは異なり、辛口で涼やかな白、ブルゴーニュ顔負けのエレガントなピノノワールと、その目を見張るほどの変貌ぶりは、業界からも高い評価を集めています。

ヘレンベルガーホーフは、生産者、および取引先の酒屋、またワイン愛好家からの信頼も厚く、以前は密々な関係を築いていました。ところが2020年、コロナ襲来をきっかけにSNSに全力投球します。

注目を集める独自のプロジェクトと情報発信

現地を訪問できない分、生産者の今を紹介する手段として、いち早くボトル裏に動画のQRコードを導入、公式LINE、ブログ、Instagramライブ配信、YouTubeSNSをフル活用してきました。

また、「ぶどうの樹3本のオーナー」プロジェクトは、同社で30年も続いている人気の企画です。年会費11,000円で畑のオーナーになると、ヘレンが所有しているモーゼルの畑のワインが5~6本送られてくる仕組みです。この企画でお世話になっているのが、冒頭の「ぶどうの卸先がない」と困っている生産者、『パストゥゲン家』 です。

ドイツでも感染者の増加を受けて、スーパーマーケット以外はロックダウンとなりました。レストランやBARも休業していたので、せっかく育てたぶどうの行く先がありませんでした。そこで生産者は山野さんに相談します。彼は人と畑を信頼して、全量を引き受ける決意をします。20209月のことでした。

季節は1周して1年後の9月、エチケットに愛らしい猫が描かれた、MIKE RIESLING 2020が発売されました。

2021年9月 ミケリースリング2020をリリース

山野さん
インターネットやSNSの普及で「モノ」があふれている時代です。どのワインを選んでも、そこそこ美味しい。もはや品質では差別化はできません。「モノ」ではなく「コト」を意識して、誰から買うのかや、そのプロセスが重要です」 

ワインそのものを販売していたアウトプットエコノミーから、制作過程に価値を見出すプロセスエコノミーへと時代は移行しています。要するにプロセスを他者と共有してその価値を販売すると言うこと。

製品の良さを訴えただけでは中小企業には限界があります。製造の過程を共有しながらお客様と一緒に創っていく。自分で決めずに社員とお客様を巻き込んで取り組むという、自分自身への挑戦でした

同社では「ワインをワインとして扱う」をモットーに、どこで、誰が、どんな想いでワインを造っているのか、この“伝える”を大切にしてきたので、巻き込みはその延長線だと感じました。私も経営者のはしくれであるため、山野さんの熱弁を聞いて大いに合点しました。

<STORY>
コロナ騒動で失われた2020年を取り戻そう!三毛猫のミケは日本で生まれた子猫。独り立ちの季節がきて、帰国するドイツ人夫婦と一緒にモーゼルの街にやって来た。月日は流れ、すっかりこの街の猫となる。ミケのお気に入り場所は酒場の軒先。いつもの場所に行くと、また皆が戻って来た。お気に入りの場所で大切な人と過ごす、絆を繋ぐ1本。

(公財)日本動物愛護協会【通称:JSPCA】に売り上げの22円/本(ニャンニャン円)を寄付。寄付金の50万円は、STOP殺処分!飼い主のいない猫の不妊去勢手術に使われる。


ニャンともおいしいフルーティーな白ワイン ミケリースリング2020 税込2,200

温暖な地中海の風の影響を受けないモーゼル地方。ハンギングタイム(木成りの状態)が長いので収穫も遅い。そのため土壌から根は、より多くのものを吸収し、アロマに欠かせない生理的熟成もゆっくり進む。畑は斜面で水はけがよく果粒は濃厚、岩山からのエキス分が染み込んで味わい深いワインとなる。

レモン、グレープフルーツ、ライム、白い花の香り。酸はフレッシュで唾液がジュワッ、北の産地を思わせる涼やかさがある。ドライでクリスピーな乾いた印象に、搾りたてのレモンを合わせたイメージ。アフターの酸がキリッと繊細。シンプルで飽きのこない味。塩味も感じるので、お魚くわえたドラ猫~♪じゃないけど、魚、魚、魚。芳ばしく焼けた秋刀魚にレモンをギュッと絞って一緒に食したい!

どうです、飲みたくなってきたでしょう。

デザイン会社と何度も打ち合わせを重ね、やっと完成したエチケット。社員は一丸となって活き活きと制作に取り組み、おかげでSNSもスキルアップして成果も実感、おまけに生産者は大喜びし、お客様との絆も深くなったとのこと。プラス面がある一方で、会社全体を巻き込めたが、もっと社員の意見を反映させることができたのではなかったか、と山野さんは振り返ります。

SNSを最大限に味方につけ、巻き込み大作戦が成功!915日から販売をスタートし3週間で約2000本が旅立ちました。#ミケリースリングSNSに投稿してくれる方や、どこで買えるのか?などのお問い合わせもあったそうです。

最後に

美味しいワインに舌鼓するだけでなく、誕生ストーリーをも存分に楽しませて頂きました。造り手を助けたい社長の想いから派生して、社員とお客様を巻き込んでの快進撃は見物でした。その上、ワイン好きはもちろんのこと、猫好きも杯を交わすことによって社会貢献ができるので、一石三鳥。いや、一石三猫ですね!

今、貴方が飲んでいるワインのストーリーは何ですか。

それでは皆様、ごきげんニャン!

ヘレンベルガーホーフのサイト全国の酒販店はこちら>

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

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