
2021年11月10日
皆様、こんにちは。ワインインポーターの大野みさきです。
去る11月11日はキリスト教の祝日、【聖マルティヌスの日】でした。収穫祭を祝う日、または冬のはじまりの日とも言われています。その上、スロヴェニアではぶどうがワインになる日でもあり、現地ではその年の新酒が楽しまれます。
この記念すべき日に新宿のヒルトンでは、駐日スロヴェニア共和国大使館による【ヨーロッパの宝石“スロヴェニア“を堪能するDISCOVER&TASTE SLOVENIA-Heart of Europe-】 建国30周年を記念した展示会が開催されました。
今日は、ワイン輸入元でありながら、ちゃっかり各ブースでスロヴェニアを堪能した私が、ワインを通して同国の魅力を余すところなくお伝えしたいと思います。
365wineのブース
イタリアの東、オーストリアの南、まさにヨーロッパの中央に位置する、人口209万人の国です。この四国サイズの小国に、「ヨーロッパの宝石」と謳われるぐらい、美しい!美味しい!優しい!がギュッと詰まっているのです。
スロヴェニアは世界で唯一、国名にLOVEの文字が入っている国です!
sLOVEnia~愛のある国にようこそ~
大野さんと駐日大使アナさん
まずは日本におけるスロヴェニアのトップ人物をご紹介しましょう。アナ ポラック ペトリッチ駐日スロヴェニア共和国大使(H.E. Dr. Ana POLAK PETRIČ)です。
大使と初めてお会いしたのは、来日されて間もない頃でした。新体操の元ナショナルチームメンバーであり、国際審判員を務めたご経験もおありなので、東京オリンピック関連のご公務には格別な想いがあったに違いありません。
スロヴェニアのホストタウンである福井市とは、共生社会の実現に向けて、「共に生きる」をキーワードに活動されていました。誠実、そして現場の声にも耳を傾けてくれるお人柄なので、私を含めて彼女をリスペクト&フォローしている者が、後を絶たないと想像します。
大使は展示会のスピーチでも、日本とスロヴェニアの両国の信頼と発展、共同プロジェクトの期待についてお話しされていました。
民族衣装を着ているクレアさん
「これは日本の着物のようなもので、スロヴェニアの伝統的な民族衣装です。大学の卒業式もこの格好で出席したら大好評でしたよ」
2021年7月よりスロヴェニアはEUの議長国に就任しました。が、その前に、地図上に突如、「スロヴェニア」という国が出現したのが、今から30年前のことです。まだ若い国です。ワインを語る時、地理、歴史、哲学などが深く関係してきますよね。まずは、国のあけぼのからお話しましょう。
かつてはヨーロッパの火薬庫と呼ばれていたバルカン半島。その中でも西ヨーロッパに一番近いスロヴェニアは、1991年にユーゴスラビアから無血で独立しました。
現在は、自然豊かなハイテク工業先進国で、経済安定性世界第1位、世界安全な国ランキング第8位、今年のロンリープラネット(旅行ガイドブック、通称:ロンプラ)では、2022年に観光したい国トップ10の、第5位にスロヴェニアが選ばれました。
同国の主な産業は、IT、人工知能AI、ロボット工業、新エネルギーです。スロヴェニアの大学生の41.2%は、科学か工学の学位を持っているほど、この分野に長けています。(ちなみに大学まで学校教育は無償です)
IT研究は1972年に遡り、それ以降は日本企業の工場を誘致したり、共同プロジェクト開発に取り組んだりし(安川電機、日立製作所、ダイヘンバストロイ、NEC、TOYOTA、日本通運、伊藤忠ロジスティックなど)、今やIT分野では、世界のトップレベルです。 中欧、東欧のなかでも景気はすこぶる良く、EUにおけるGDPの伸びも、先進国の倍以上の3%上昇、人件費も毎年5%上昇し、今まさに経済成長を遂げています。
内閣府の科学技術政策、Society5.0では、オープンなデジタルプラットフォームを目指し、モノを売るのではなく、社会をデザインします。スロヴェニアを研究&実験の場とし、全てのプロジェクトはEUと連携。そうして協力し合って解決した課題を世界とシェアするビジョンを描いています。
加えてスロヴェニア人は、高度なロボット工業技術のみならず、高い語学力も有しています。小国なので80%を輸出に頼らざる負えません。
隣国と仲良くやっていかないと、国として成り立たない、そんな立ち位置のため、小中高では母国語(スロヴェニア語)以外に、2ヶ国語を必須としています。つまり、英語の他に第3言語は何にしようか。オーストリアが近いから、ドイツ語にしようかの話です。自社の生産者でも5ヶ国語、あるいは7ヶ国語を話す人もいます。
重ねて、勤勉、実直でまじめ、温厚で穏やかなタイプが多く、ちょっぴりシャイな気質を持ち合わせているのがスロヴェニア人です。
国土の60%が森林なので、国民の200人に1人が養蜂家。港町のピランでは1200年の伝統を誇る幻の結晶塩作りが、今もなお盛んに行われています。また、ロイヤルファミリーにも献上される「リピッツア」と呼ばれる白馬の名産地でもあり、スロヴェニア屈指の観光スポットといえば、「ブレッド湖」です。
圧巻なのは国内に点在する9,000ヶ所の鍾乳洞。その大きさでも世界一です。スポーツでは、ロードバイク、クライミング、カヌーでは、東京オリンピックでも金メダルを獲得したほどの強国です。雄大な自然が育んだのは、人(アスリート)だけではありません。食も然り。新鮮なオーガニック野菜、自家製プロシュート、蛇口をひねるといつでも手に入る美味しい水、ソチャ川の鱒など…挙げるときりがありません。
そして、知る人ぞ知る、「ワイン王国」でもあるのです。
お待たせしました、やっとワインの出番です。
ワイン造りの歴史は、フランスやイタリアより古く、2400年の伝統があります。特筆すべきは、スロヴェニアには、なんと28,000軒のワイナリーがあること。しかし、平均所有畑が0.57haと極小で、自分の家族や友人が楽しむワインを、ガレージワイナリーのように軒先で造るスタイルが大半です。
おまけに年間のワイン消費量が、常にトップ10入り。1人あたり年間46Lのワインを消費する大酒飲みの国なので、ワインは地産地消が主です。
旧ユーゴの時代は、社会主義国家であったため、ドメーヌ元詰めが禁止されていました。ワイナリーのぶどう栽培が許されなかったので、農家からぶどうを購入してワインを造っていたのです。栽培者と醸造者が異なれば、何かと不都合が生じます。それが独立を境にワインの品質も格段に向上しました。以前のように赤ワインをコーラで割って飲んでいた時代は終わりました。
冷涼な産地なので、7:3で白ワインの国。昨今、流行りであるオレンジワインの銘醸地でもあります。
スロヴェニアでは、ぶどうに限らず作物はオーガニック栽培なのが当たり前です。昔から自然なワイン造りをしてきたので、どんな白ぶどうでも数時間から数日間、果皮を果汁に漬け込んで、赤ワインの製法を白ワインにも取り入れて造っています。
スロヴェニア人にとって醸しは文化です。フルボディで味わいがしっかりとしたオレンジワインを造るのが大得意!長期に渡って熟成可能なポテンシャルを秘める、実に良いワインを生み出します。自然派の造り手である一方で、洗練された味わいで、欠陥のないクリーンなワインが多いのも特徴です。
他国と比べると決して安くないですが、品質に対してのコスパは抜群です!スロヴェニアのお爺さん世代は、引っ越していないのにパスポートが3回も変わっています。(オーストラリアハンガリー帝国 → イタリア → ユーゴスラビア → スロヴェニア)
そんな激動を生きた人たち。イタリア人が言うには、職人肌というより、オーストラリアハンガリー帝国だった頃の時代を受け継ぎ、どうやらビジネス上手で、安売りをしない国民性らしいのです。また、生産量が少ない上に、物価および人件費の高騰により、生産者サイドでの1本あたりのコストが高くなるのが現状。生産者もそれを重々にしてわかっているので、誰かのマネをするのではなく、唯一無二の存在であることを試みます。
それぞれが存分に自身のキャラクターを具現化するので、土地やぶどうの個性より、生産者の個性が前面に現れたワインに仕上がります。この個性こそが、スロヴェニアワインの最大の魅力。現地で20€台のワインが、ブルゴーニュで同じクオリティだと70~80€となります。クオリティの高いワインがリーズナブルな価格で楽しめる!とスロヴェニア人は満足しています。
そう、忘れてならないのが食です。スロヴェニアの古いことわざには、「人々の心を開くには、まずはその腹を満たすことから」とあります。もちろん食事には必ずワインが付きものです。
京都の太秦には、日本で唯一のスロヴェニア料理店、ピカポロンツア(pikapolonca:てんとう虫の意)があります。熊さんのように大柄なシェフ、イゴール・ライラさんと奥様の智恵さんは、開業より20年間、スロヴェニアの家庭料理を通じ、同国の魅力を紹介し続けてきました。愛情いっぱいのスロヴェニア料理とホスピタリティーには誰もが笑顔となり、スロヴェニアのことが好きになるとイゴールさん。展示会では東京で暮らす娘のライラ未遊さんが、ポティツアの具をタルト生地に流し込んだ、焼き菓子を披露されていました。
■スロヴェニア料理店 ピカポロンツア
http://www.ne.jp/asahi/pika/polonca/
スロヴェニア料理は、「世界一美味しい!」と言っても過言ではありません。どのお料理を食べても、それはもう絶品です。
アルプス、地中海、パンノニア平原が出会うこの場所では、多様性に富む独自の食文化を築いてきました。代表的な日本食のように、すぐに出てこないのがスロヴェニア料理です。クランスカ・クロバサと呼ばれるソーセージは、全土で食される最もポピュラーな食べ物です。
新鮮なオーガニックサラダ、塩胡椒してただ水で煮込んだだけの、豚、牛、鶏、猪など。骨ごと圧力鍋で煮込んだビーフスープ、熱々でたっぷりと注がれたキノコや豆のスープ、ヨタ(ザウワークラウトを用いた酸っぱいスープ)などは、これとパンがあれば満腹になるほどです。その他、巻いたり重ねたりして、地味な色合いのものばかり目につきますが、シュトルクリ、ポティツア、ギバニツアなど、素朴な味わいのデザート(おかず)も有名です。
また、スロヴェニアでは蕎麦(=アイダ)の消費量が、日本の1.5倍です。オリンピック開会式で、アナウンサーがスロヴェニア人は蕎麦食であることを紹介したところ、大使館のInstagramのフォロワーが、俄かに爆増したと聞きました。ただ、日本のように麺でこそありませんが(硬水なので生地が固まらないため)、パンにしたり、お湯で練って蕎麦がきのようなものにしたり、おかずやスイーツの生地として大活躍しています。
日本の家庭料理と非常に似ているものをスロヴェニア人も食します。来日経験のあるスロヴェニア人は、「味わいが似ている!」と皆さん言われます。
スロヴェニアも雪国なので、日本の東北と同じようなイメージです。スキーのジャンプ台も設置されていて、現在、高梨選手が冬季オリンピック2022に向けて現地でトレーニングを行っています。 なお、2月には秋田のなまはげによく似たクレントと呼ばれる生き物が、悪霊と冬を追い払うためにベルを鳴らしながら街中を練り歩き、祭りを盛り上げます。共通点は親近感に繋がりますね!
現在、スロヴェニアワインを日本に輸入しているインポーターは、数えるほどしかいません。
そのなかでも古株の株式会社ZARIAは、建国時より同国と密な関係を持ち、日‐スロヴェニア間の発展に尽力してきました。展示会でオーナー自らがスライスしてふるまわれたKodilaの生ハム。肉加工製品の輸入には厚生労働省の厳しい審査を通過する必要があります。気の遠くなるような10年の歳月と、膨大な労力をかけて、追随するであろう私たちの「道」を作って下さいました。
今回、展示会に出展された17社は、それぞれ異なったアイテム(ワイン、生ハム、ピラン塩、はちみつ、チョコレート、オリーブオイル、パンプキンシードオイル、キャンピングカー、モーター、スキー用品、ソフトウェア、医療レーザー、電子機器、ITサービス)を輸入していますが、彼らの目的は単なる物販ではなく、両国の架け橋となることです。
今後はワインを通してスロヴェニアを盛り上げるべく、インポーターの横の繋がりを強化していこうではないか!!と話していたので、近い将来、スロヴェニアワインだけのイベントや業務店試飲会なども実現されることでしょう。乞うご期待です。
スロヴェニア人と日本人はどことなく共通点があると大使も言われていました。美味しいワインに国境がないのと同様に、優しい心を持つ人間にも隔たりはありません。愛の国から美味しいワインとその魅力をこれからもお届けして参りたいと思います。
それでは皆様、Adijo(アディオ)バイバイ!
■株式会社ザリア(ワイン、生ハム)
http://www.zaria-jpn.com/company.html
■レボ・エアー株式会社(空圧機器、ワイン、オリーブオイル)
https://www.mestna-reka.com/
■365wine(ワイン)
http://www.365wine.co.jp/
■株式会社創造堂プラニング(ワイン)
http://www.souzouplan.com/
■株式会社ユアーズ・コーポレーション(ワイン)
http://www.yours-wineshop.com/
■駐日スロヴェニア共和国大使館
http://www.tokyo.embassy.si/index.php?id=48&L=11
■スロヴェニア観光局
https://slovenia.si/
https://www.instagram.com/feelslovenia/
■日本スロヴェニアビジネス協会
https://www.jsbc-jp.org/
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/