2022年01月26日

【インタビュー】北海道の土着品種「山幸」ロゼを紹介!帯広「相澤ワイナリー」

皆様こんにちは。インポーターの大野みさきです。202012月、北海道の土着品種である山幸(やまさち)がOIV登録されたのは、記憶に新しいところです。

大阪のワインショップでも、「山幸ありますか?」と、最近は取扱いの問い合わせも、顕著に増えたのだとか。今日はそんな日本ワイン業界でも期待を寄せる品種、山幸についてご紹介しましょう。

十勝のワイン造りと相澤ワイナリー

帯広の「相澤ワイナリー」2代目 相澤一郎さんにお話しを伺いました。

正直、OIVに登録が決まった時、何で日本人も知らない品種が、選ばれるのか!? と思いましたよ。でも、これをきっかけに広まって、飲み手が増えてくれたら良いですね」と相澤さん。

ローカルを飛び越え一気にグローバルへ、山幸を飲んだことがない方が大半と思うので、今回の登録が認知度アップに繋がるのではないかと期待が持てます。

相澤ワイナリーのプロフィール

山幸は今のところ栽培しているエリア、造り手が限定的なため、同品種を知るには先ずは十勝平野に位置する帯広と、その土地でワイン造りを営む「相澤ワイナリー」について押さえておきましょう。

相澤ワイナリーは1998年栽培をスタート。それから初リリースまでなんと20年以上の歳月をかけました。

ヤマブドウは元々、十勝に自生していた品種です。ヤマブドウ好きの父が、土地開発で減少するヤマブドウを守るべく、いちから山地を開拓して畑を作ったのが始まりです(農地は農家しか買えなかったため)。そのため畑は5ヶ所に分かれています。

ヤマブドウは苗木を作るのが難しく、美味しいぶどうがなる個体を選別して増やしていくのにも時間がかかります。通常は3年目からですが、ヤマブドウの場合は実付くまで510年の歳月を要します。木が成長するまではジュースやジャムなどで家業を繋ぎ、相澤さんも都市ガスの営業マンの職を離れ、2016年から岩見沢の「10Rワイナリー」で委託醸造を開始。

そして、酒造免許を取得した翌年の2020年に念願のワインをリリースしました。

ワイン造りの信条

無農薬栽培、無化学肥料にこだわる姿勢は、父の代から受け継がれ、十勝の自然と生き物を最大限に活かしながら、ワイン造りを手掛けています。

相澤さんは「虫も嫌いだし、収量も落ちるからな・・・」と思ったこともあったそうですが、山に自生しているぶどうは農薬を使わなくても素直に美味しい。無理に使う必要がないと考えます。また、開墾時は林を残し、必要ならば花木を植えて、害虫が発生しても益虫が退治してくれるので、彼らの住処を残すよう工夫しました。植物に住み着く菌や酵母が、ワインの香りに良い影響があるのではないかと期待します。

今でこそ畑仕事も醸造も板についてきた相澤さんですが、2019年頃までは、発酵は上手くいっているのか、バブルは閉めたか、と心配性で度々、胃痛に悩まされていたのだとか。どうやら繊細さんのようです。でも、気にし過ぎない~、楽しくみんなで~、自然に任せよう~とワイン造りへのスタンスを気楽に考えたところ、人にもワインにもポジティブな効果が得られたようです。

手がけるブドウ品種

取材は1月半ばでしたが、積雪が60㎝~1mを記録する札幌とは異なり、道東は雪が積もっても01㎝、極寒ですが晴れの日も多く、雪が少ないのが特徴です。と伺ったその夜、寒波の到来で60㎝の積雪があったとのこと!相澤ワイナリーで、主として育てているぶどうは、ヤマブドウ山幸(ヤマブドウ×清見)、清舞(こちらもヤマブドウ×清見)、いちな(オリジナルぶどうには相澤さんの愛娘の名を)です。

冷涼な土地なのに白ぶどうがありません。実は生るかもしれないけれど、完熟するのは難しく、ヴィティス ヴェニフィラやラブルスカは栽培に向いていないのだそう。この土地で美味しいぶどう、それはヤマブドウとその交配種が該当します。

十勝のヤマブドウはヴィティス アムレンシスで、雄と雌が存在します。花粉を飛ばして結実するので、稀に突然変異で白ぶどうができたりもします。相澤ワイナリーでも、樹齢3年のピノグリを住宅地で実験的に栽培したり、僅かに実の生るシャルドネを育てたりしています。しかし1010日~20日はマイナス5℃~マイナス10℃と急激に冷え込むため、残念ながら熟す前に落葉し、秋のシーズンは駆け足で終わりを告げます。

十勝でアムレンシス以外のぶどう栽培は、現段階では大変難しいのが現状。相澤さんが仰るには、山幸は北海道でこそ上手く育つ品種で、もしかしたら暖かい本州では難しいかもしれないとのこと。まだまだ未知の部分が多く、だからこそ、日本各地の造り手が注目するわけですね。

十勝を山梨や余市などのように、日本一のぶどう産地、ワイン産地にしたい」と相澤さんは意気込みます。

山幸やヤマブドウを知って貰いたいし、飲んで貰いたいです。山幸は収穫期には比較的酸が低くなりますが、ヤマブドウ系でもMCで造っているので、りんご酸(鋭角な酸味)も低くなり、飲み易いです
※マセラシオンカルボニック…炭酸ガスを充てんしワインを造る方法、ボジョレーヌーボーにも使われる

「相澤ワイナリー」龍之介(山幸100%ロゼワイン)を紹介

龍之介はSince 2018~、同年に生れた息子さんのお名前をワインに命名。「ワイン名とか考えるのが面倒臭くって」と相澤さん。どちらの龍之介も、相澤さんにとって、大切な子なのだと感じます。

■龍之介2020 


税込3,300

相澤ワイナリーHPで見る

収穫は10月中旬に終了。ぶどうは長い時間をかけてゆっくりとワインになります。

天然酵母に委ね、全房で40日間MCを施します。寒いので実が潰れて果汁が流れ出ることなく、果粒の中で細胞内発酵が進みます。酵母の力をリスペクトした醸造です。その後、全房ごとプレスして、ステンレスタンク発酵、古樽で46ヶ月熟成。ノンフィルター。ボトリング前に少量の亜硫酸を添加して品質を守ります。

造り手が教える!おすすめの飲み方

(ワインセラーなどの)寒いところから、頂く30分前に飲む場所へ移動させ、大振りのグラス、例えばブルゴーニュグラスだと、香りも大きく広がるので良いですよ。開けたら直ぐに飲み切らないとならないのか?とよく聞かれますが、全くそんなことはなく、3日かけてゆっくり、変化を楽しんで、召し上がって頂きたいです。むしろ2日目の方が美味しくなったりもしますよ。

レストランでは鹿肉と合わせて提供されたりもしますが、ご自宅なら私も大好きなブルボンのチーズおかき。このおつまみは、龍之介だけではなく、樽を使った白ワインにもよく合いますよ

味わった感想

沢山のお話を伺った後なので、楽しみが雪だるま式にゴロゴロと巨大化してしまいました。はるばる北の大地から到着した山幸を頂く時です。心躍らせながらグラスに注ぎます。

まずは鮮やかなビビッドレッドカラーに驚きます。ロゼワインよりか赤ワインに近い透き通ったトーンで、宝石のような輝きを放ちます。香りは控えめですが、イチゴ、フランボワーズなどのミックスベリー、清涼なハーブ、オリエンタルなスパイスなどが香ります。それでいてどこか懐かしさを覚えます。

酸はとてもフレッシュでピュア。ライトでシンプルな味わいの中に透明感があります。前菜にハーブをたっぷりと使ったサラダやカルパッチョ。新鮮な北海道ホタテのマリネ。主菜はムール貝のワイン蒸しバケツ一杯。デザートにはイチゴとフレッシュチーズを和えたもの。そんなメニューを想像しました。

翌日以降、どのように変化するかも楽しみです。

十勝生まれのワインをぜひ味わってみて

「龍之介」は以平町の山幸のみを使っていますが、MC10日の「さちろぜ」(別のロゼワイン)は、女性10名ほどで育てた阿寒町のぶどうで、7080代のおばあちゃんたちが摘んだ山幸を使用。土地のテロワールも存分に発揮されているとのこと。エリアごとの違い、またワイナリーごとの違いなど、色々と試してみるのも興味深いです。山幸の通も出てきそうです。

道東で最も歴史のある「十勝ワイン」から56年遅れて「相澤ワイナリー」が誕生。気温が低すぎることから、白ぶどうどころかぶどうそのものが栽培できないエリアであったことが、長らくワイン産業が発展しなかった原因のひとつだと考えます。

注目の産地になりつつある十勝地方

この1、2年でワイナリーができ、現在は十勝で4軒になりました。

相澤さん「増えるのは良いことです。外部から来てくれたらと思います

実際、相澤ワイナリーでも2020年より道東で唯一の委託醸造を受け入れています。今までは遠方に足を運ばないとならなかったのですが、ワイン造りが近くで学べるようになり、皆で一緒に勉強していこうという精神です。また、本業が不動産である相澤さんの父は、小さなぶどう畑が併設されたグランピングやキャンプ場を建設して、ワインも楽しんで貰えたらと語ります。

地域を盛り上げ、ワインの裾野を広げる活動です。厳しい気候にも関わらずぶどう栽培に挑戦し続ける姿勢、チャレンジ精神旺盛な十勝の気質が、随所に感じられました。

最後に

山幸などのワインだけでなく、食料自給率1200%を誇る農業王国です。チーズ工房も30軒を超え、帯広畜産大学には日本酒蔵もできました。十勝だけで1週間は楽しめますよ。(コロナが収まったら)是非、遊びに来て下さいね」と相澤さん。

地域が発展し、そこにワインと人々の笑顔がある、何とも微笑ましい光景です。来夏は北を目指すのも良しですね。

それでは皆様、ごきげんよう!

取材協力:相澤ワイナリー

 


365wine 大野みさき

スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。

【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

この記事をSNSでシェアする