
2021年11月10日
皆様、こんにちは。インポーターの大野みさきです。
今日のワイン産地は『四国』 です。日本ワインの中でもなかなか話題に出てこない、知られざるワイン産地です。
現在、さぬきワイナリー(香川)と内子ワイナリー(愛媛)、近年に設立された、ミシマファームワイナリー(高知)、大三島みんなのワイナリー(愛媛)、井上ワイナリー(高知)、Natan葡萄酒醸造所(徳島)の6軒のワイナリーが点在しています。
ちなみに同等の面積を誇るスロヴェニアの28000軒と比較しても(365wineはスロヴェニアワインを輸入しています)、ワイン造りにおいては、産声を上げたばかりの新しいエリアです。そんなワイン不毛の地で、新規参入を試みるのは、香川・高松「KAMANO VINEYARDS(カマノヴィンヤード)」の釜野清登さんです。
「ワイナリーは中国地方や九州地方にはありますが、四国には本当にないのですよ。あっても土産物コーナーに並ぶ商業的なワインが多いです」
というのも古くから香川は、生食用ぶどうの産地で、岡山に並ぶ、マスカットをはじめとした果物王国です。そんな需要に加え、農家さんも価格の面から、高値で売れる生食用を好んで栽培してきた背景があります。
「生食用ぶどうは実になってからの方が、手間がかかって大変で、それと比べてもワイン用ぶどうは、比較的栽培しやすいです。また、瀬戸内は温暖で雨も少なく、ワイン産地でよく見かけるオリーブも、小豆島では日本一の収穫量を誇り、香川本土でも盛んに生育されています。僕の畑も広大なオリーブ畑の一角にありますよ。ワイン用ぶどうを育てるのには、まさに好適地です!」
他のワイン産地からワンテンポ遅れてのスタートですが、これから岡山、広島の対岸にも、瀬戸内ワイナリーが続々と、誕生する兆しが感じられます。
釜野さんの30代は、ワインエキスパート、シニアワインエキスパート、wset-L3、ドイツワインケナーの資格を取得して研鑽を積み、ワインの魅力を講習会などで広める活動を通して、すっかりワインにハマっていったそうです。
そんなワイン好きが高じ、「せっかくなら自分で作ったぶどうで美味しいワインができないか。まあ、売れなくても自分が飲んだら良い!」と心を決めました。
ワイン造りの道への第一歩として、まずは自宅にワイン用ぶどうを植えましたが、育て方がさっぱりわからず、日本ソムリエ協会が神戸ワイナリーで主催する、栽培研修の門を叩きます。その後も祖父母の住んでいた町の耕作放棄地を利用し、着実に栽培スキルを積み重ねてきました。
そんな釜野さんも畑仕事をはじめて早5年目に突入。今はマスカット・ベーリーA、デラウエア、ヤマソービニオン、メルローを植えた、約0.6haの職場で、木々を世話する毎日です。
「畑に住み着いた酵母が醸す、【高松味】のワインが造りたい!天然酵母を活かした、その土地の風土が感じられるワインが造りたい!」
将来はヤマブドウ系品種と何かを交配して、高松に根付いたオリジナルぶどうを作りたいと釜野さんは語ります。
早生栽培により草が生い茂ったジャングル畑は、休耕田であったため化学農薬の影響もなく、生き物の住処となり、生態系も壊れていないそうです。よって、ぶどうに多いカビや害虫の被害も一定の割合でしか起きないのだとか。手作り有機農薬(酢、焼酎、ニンニク、唐辛子)を散布して、有機栽培でぶどうは育まれます。
マスカット・ベーリーAは、
デラウエアも垣根仕立てにすることによって、小粒で、赤色(!)
自己流ですが、畑の土を盛り上げて畝にしてぶどうが植えられています。
「今の畑は休耕田を畑にしたので、粘土質で水はけが悪く、
苗木を植えてから実がなるまでが驚異の早さで、
自然派ワインの神様!と絶賛される大岡弘武さんに醸造を教わりながら、2021年の仕込みぶどう400㎏を全房(果梗ごと)で、昔ながらの足踏みで破砕し、クラレに近いピンク色の赤ワインを仕込みます。
わが国では酒税を円滑に納付させることを目的とし、酒税法に基づき酒類製造免許を所持しない者が、アルコール度数を1度以上含有する、飲料の製造を禁止しています。委託醸造とは文字通り、酒造免許を所有している者に、醸造を委託すること。
昨今は、原料のぶどうと委託先があれば、誰でも簡単にオリジナルワインが造れるので、委託醸造のニーズが急増しています。ワイナリーによっては、委託醸造での生産の方が、自社生産よりも多いところもあるぐらいです。ワイン造りを生業にする予定で酒造免許取得まで委託するケース、あるいは趣味で委託するケースと様々ですが、希望者は委託醸造を受け入れているワイナリーに依頼します。
また、ひと口に委託醸造と言っても、どこまで何をさせてくれるかは、ワイナリーによって色々です。ワイン醸造のハイライトだけに携われる場合と、リクエスト後はお任せの場合と、ほとんどノータッチの放置プレイの場合と、一緒に教えながら造ってくれる場合。ワイナリーの立地や造り手のスキル以外に、そこで何が出来るかは、依頼を決定する重要な要因のひとつでもあります。
大岡さんが介入した業界注目のワインは、現在225Lのバリック樽で熟成中。酒質を見極めてからボトリング時期を決定するので、リリースされるのはまだ先です。
そのため、カマノヴィンヤードが2020年に仕込んだKusawami(クサワミ)を試飲しました。
kusawami2020 税込2,750(参考小売化価格)
高松のマスカット・ベーリーA、デラウエア、ヤマソービニオンを用いた、ロゼのスパークリングワイン、シャンパン酵母を使用した二次発酵の泡です。無濾過なので、ボトルの天地をひっくり返して、ボトル底に溜まった滓を混ぜて飲むのがおすすめとのこと。微発泡ですが、そっと旨味の元を攪拌させました。
繊細な香りが飛ばないよう、小振りのグラスで頂きます。仄かなイチゴの香り、ジューシーで口当たりも優しいです。滋味な滓がワインの骨格に丸みを持たせます。「唐揚げ、かき揚げ、塩せんべいと是非、試してみて下さい」と釜野さん。
思いのほか高松ではワイン文化が根付いており、2大巨塔であるボルドーやブルゴーニュはもちろんのこと、最近では自然派ワインのお店も増えてきています。カマノヴィンヤードも畑を拡大し、来年にかけて更に醸造においての実務経験を重ね、2年後ぐらいにハレて酒類製造免許を取得する計画です。
休耕田や耕作放棄地をから、地域の活性化に繋げるのを皮切りに、高松味の具現化。飲んで、食べてで、香川を、高松を盛り上げていけたらと願う、釜野さんの挑戦は続きます。
美味しい海の幸と、瀬戸内ワインで乾杯できる日を夢見て、楽しみに成長と熟成を待ちたいと思います。
それでは皆様、ごきげんよう!
365wine 大野みさき
スロヴェニアワイン輸入元365wine㈱ 代表取締役。
元ANA国際線CAが、7年の在職中にワインに魅せられ渡仏。2014年に帰国し、ひと月でワイン輸入会社を設立。買付け、営業、展示会、ウェブショップ運営、倉庫作業をヒィヒィ言いながらも華麗にこなす。巷ではスロヴェニアワインの第一人者と囁かれている。まんざらでもない。ワイン講師、サクラアワードの審査員も喜んで引き受ける。毎日ワインを飲むのか尋ねられたら、「はい、365日ワインです♡」と返すよう心掛けている。
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/