2022年07月20日

【ワインの廃材】コルクで生みだすアート

皆様こんにちは、インポーターの大野みさきです。今日は飲み終えたワインの廃材から生み出される、ゼロウェイストアートをご紹介します。

90㎝×120㎝のキャンバスにズラリと敷き詰められているのは、約2,400個のコルクです。「捨てるとゴミですが、こうして作品として生まれ変われば、“意味”が生じます。人が新しくワインを飲む楽しみを広げたいです」 そう語るのは、コルクアート作家の久保友則さん。ワインを楽しんだ後にコルクが作品となり、再びワインのラベルに生まれ変わるという。何とも素敵な物語です。

コルクアート作家・久保友則さん

久保さんのアトリエ“Atelier CorkTip”は、東京スカイツリーの見える浅草の下町にあります。たくさんの作品が展示されるワインバーでもあり、ワインショップでもあるという、いと不思議な空間です。

久保さんは芸大出身でもなく、絵描きは巧くないと謙遜します。しかし、これはどうやら本当のことのようで、美術館&博物館好きですが鑑賞が専門でアートとも全く関係のないお仕事をされていました。そんな制作とは無縁の久保さんが、コルクアート作家として活躍するきっかけとなったのは、ご自身の根っからのワイン好きにありました。特筆すべきは、ワイン一筋でやってきた経歴の持ち主だということです。20代前半はワインバーでアルバイトを経験し、ソムリエ呼称資格の取得後は、ワインショップ、飲食店、そしてワインの輸入にも携わってきました。ワインを通して世界の様々な食文化、生活スタイルや歴史などを伝えてきました。

そんな中、どうしても仕事上で貯まっていくのが、ワインを開けた後の“コルク”です。この廃材を何かに活用できないかとずっと考えてきました。そして、ある閃きから15年間コルクを捨て続けてきた人生に終止符を打ちます。それは試飲会で開けたワインのコルクを一列に並べた時のこと。それぞれのコルクの色合いが異なるので、そのトーン差でモザイクアートをしたら面白そうだと思い付きました。人物像を想像し、これが完成したらきっと素晴らしいアートになるだろうと確信します。

コルクアート

“アイデアをカタチにするには、どうしたらよいか当時、働いていたワインショップの専属デザイナーだったハヤシコウさん(飲食店を中心に、壁画や看板、ロゴマークなどを手掛けるプロのデザイナー)に相談します。コルクの断面は全て円形でサイズが決まっていて、それを1,0002,000個、1mに敷き詰めれば、モザイク画ができるのではないだろうか。2014年の正月、机上の空論ではなく、やってみなければわからない!と、まずは地道にコルク集めからスタートしました。

折しもフランス革命前後のルイ16世やナポレオンにスポットを当てたワイン会をしており、9月に開催される「ナポレオンとワインの会」に合わせて制作を進めます。ワイン業界の知り合いに声をかけ、コルク収集の日々が続きます。レストランや酒屋は、月に段ボール1箱分を提供いただいたり、また個人のワイン好きの方の協力もあり、半年で5,000個のコルクを集めることに成功しました。

資材が揃ったので、夏休みはひたすら制作に励みます。使用する天然コルクは無着色です。元々、ワイン栓として使われていたので、ナチュラルなワイン色の濃淡が付いています。目や鼻の頭など光の反射がある個所は、真っ白な合成コルクを使用する拘りようです。
こうして完成したナポレオンの肖像画。「出来上った時は感無量でした。作品に使用した2,000個のコルクは2,000本のワインです。ここに絵があるということは、それだけのワインが飲まれているという証拠です。ソムリエの仕事をしている一人として、とても嬉しかったです」とおっしゃっていました。

作品

久保さんは販売が目的でコルクアートをはじめたわけではなく、描かれる人物を眺めながらその人物のこと、時代背景や歴史に思いをめぐらせ、また新たにワインを飲みたいという気分になってくれたら・・・と、そんな想いではじめました。そして、その道を作った「レオナルド・ダ・ヴィンチ」や「ココ・シャネル」などの偉人を描くことからはじめました。それから同じ時代を生きている憧れの人も作成するようになります。ファイナルファンタジーのキャラクターを描いている「天野喜孝」、「GACKT」、「ジョエル・ロブション」、「トルシエ元監督」、「スティング」など。

そして、現在では依頼があれば、1作品50万円ぐらいで制作しています。フランス人からの注文も多く、現地のワイナリーからの引き合いも増えたのだとか。彼らは自身の肖像画を好んで頼むことが多いそうです。しかし、日本人は、ワイン好きの経営者や税理士の方、大きな家の方(飾る広い場所が必要ですからね)が多く、謙虚だからか自身の肖像画よりも尊敬する人や影響を受けた人をモチーフに頼むそうです。また、最近ではギフトの肖像画だったり、ファンクラブからアーティストに送られたり、そんなケースも増えているそうです。

8作品を購入してくれたトルシエさんは、現在はボルドーのサンテミリオンにある “SOL BENI” のオーナーとなり、 作品は彼のワイナリーにも飾ってくれています。コルクアートを通してたくさんの外国人と知り合うことができました。手掛けた作品がご本人に届き、実際にお会いできるという役得があります。インポーターやその造り手もコルクアートでこんなに喜んでくれるとは、久保さん自身も嬉しく、今では大切なコミュニケーションツールのひとつとなっています。

「出会う人やお客様によって何を制作するかわからないので、まさか自分がこれを作るなんてと思うことがあります。ワインを飲む人がいるから私は作り続けられます」と久保さん。廃材が作品となり意味が生まれ、また人々はワインを飲むという究極のサステイナブルが完成!世界中のワインが日本で飲まれ、そのコルクが画となって生まれ変わり、そしてそれがまたフランスなどの世界に羽ばたいてゆく。全てが繋がって1周しています。

廃材・コルク

コルクアート1作品に必要なコルクは約2,400個。その資材調達の多くは、知人の飲食店、インポーター、酒屋からの提供で賄われてきました。「SNSで拝見しました!」と今や知らない方から、北海道~九州までの日本全国より、毎週コルクが送られてきます(しかもラブレター付き!)久保さんの活動は彼の信念に賛同する人たちで支えられています。

最後に

「いつかムートン・ロートシルトのラベルを手掛けたいです。世界中のワイナリーにも届けていきたいし、たくさんのワイン好きの方にコルクアートを楽しんで欲しいです」と抱負を述べてくれました。
久保さんがピカソの面影と重なって見えました。今日もせっせと、廃材コルクに命を吹き込むコルクアート作家の姿が想像できます。もうコルクをゴミとは言わせません。コルクゼロウェイストを目指して!
それでは皆様、ごきげんよう。

Atelier CorkTip
東京都台東区橋場1362
https://www.instagram.com/atelier_cork_tip/
※ご不要なコルクはこちらまでお送りください。お礼返しはできませんが大切に使わせて頂きます。カビが生えているものやシャンパンコルクは作品には使えません。また、配送は元払いでお願い致します。

NHK
https://www.youtube.com/watch?v=KRQtKzJLC2U


365wine 大野みさき

ANA国際線CA7年の在職中にワインに魅せられ、その後は渡仏しワインの勉強をする。2014年に帰国し、翌月にワイン輸入会社365wine株式会社を設立。365(毎日)ワインを楽しんでもらいたいという想いからの社名。スロヴェニアワイン専門のインポーター。現在はママさんスタッフを含め3名で、買い付けから輸入販売、全国の業務店営業やイベントで、スロヴェニアの魅力を各地に広める活動をする。「貴方と大切な方の毎日を笑顔にします!」をモットーに、一緒に働いてくれる仲間を募集中!
【ワインショップ】http://www.365wine.co.jp/
【instagram】https://www.instagram.com/365wine/

この記事をSNSでシェアする